会社を辞めた後は、次の就職までの間の生活費として、失業保険がもらえるかどうかは大きな問題です。失業保険は、退職後即もらえるものではなく、会社の辞め方によっても受け取り方が異なってきます。
この記事では、自己都合で会社を辞めた時の失業保険について、基本的なことから具体的なことをひととおり解説します。
失業保険とは?会社を辞めたらもらえる?
一般に失業保険と呼ばれるものは、雇用保険の失業等給付の中の「求職者給付の基本手当」であることから、「基本手当」とも言われます。
失業保険は、働いていた会社を辞めたり、働くことが難しくなった場合、雇用保険から給付されるもので、生活及び雇用の安定に繋げるための資金です。
雇用保険とは、労働者が失業時などに給付を行って、生活及び雇用の安定を図り、再就職の援助を行うことなどを目的とした保険制度です。
失業等による給付には、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の 4つがあります。
この記事では、上に赤字で示した「基本手当」のことを誤解のない範囲で「失業保険」として話を続けます。
失業保険は、退職すれば必ず受けられるものではなく、一定の受給要件があります。 自己都合での退職の場合、受給要件とは次の3つです。
- ➢ 退職日前の2年間に、雇用保険に加入していた期間が12カ月以上あること
- ➢ 失業の状態にあること
- ➢ ハローワーク等で求職の申込をおこない、積極的に転職活動していること
この場合の1カ月にカウントされるのは、有給休暇取得日も含めた出勤日である「賃金支払い基礎日数」が11日以上ある月となります。
なお、解雇などの会社都合で退職した人や65歳以上の人が退職した場合には、「退職日前1年間に、雇用保険に加入していた期間が6カ月以上」あれば適用されることになっています。
そして、ここでいう失業とは、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就けない」状態を言います。
さらに、後述しますが、実際の求職活動が必要条件となり、求職実績がなければ失業保険は支給されません。
また、失業保険は退職の理由により支給方法が異なり、次の3つに分類されます。
- ➢ 自己都合退職者である「一般の離職者」
- ➢ 会社都合退職者である「特定受給資格者」
- ➢ 自己都合であっても退職理由が特定条件に該当する「特定理由離職者」
特定理由離職者とは、次のような者を言います。
- ➢ 期間のある労働契約期間が満了し、かつ、その労働契約の更新がないことにより離職した者。
(契約の更新を希望したものの、その更新の合意が勤務先との間で成立しなかった者) - ➢ 自己都合による退職でも、自分の意思に反する正当な理由がある場合
この場合の正当な理由は次のようなケースが該当します。
- ・体力不足、心身障害、疾病、負傷などにより退職した場合
- ・妊娠、出産や育児により離職し、受給期間の延長措置を受けた場合
- ・父・母の扶養や介護など、家庭事情の急変により離職した場合
- ・配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になり離職した場合
- ・特定の理由で、通勤が困難になり離職した場合
- ・企業の人員整理などで、希望退職者の募集に応じて離職した場合
特定理由離職者の場合、通常は雇用保険の被保険者期間が離職前2年間で 12カ月以上必要ですが、離職前1年間で6カ月以上あれば受給できます。
さらに、特定理由離職者は、一般の離職者とは異なり給付制限期間がなく、支給開始が早い場合があります。
以下、自己都合で退職した「一般の離職者」と「特定理由離職者」について見ていきましょう。
失業保険をもらうための具体的な手続きについて
失業保険をもらうための手続きとして、まず必要書類を揃えて、管轄のハローワークまで持参し、手続きをします。
必要書類 | 備考 | |
---|---|---|
①※1 | 離職票-1 | 失業給付の振込先金融機関を指定するもの |
離職票-2 | 退職理由や退職直前6カ月間の給与などが記載されているもの | |
② | 本人番号確認書類 | マイナンバーカード、個人番号のある住民票の写しなど |
③ | 身元確認書類 | 運転免許所、マイナンバーカードなど |
④ | 写真2枚 | 正面上三分身、縦3.0㎝×横2.4㎝ |
⑤ | 本人名義預金通帳 | 又はキャッシュカード |
※1 離職票1及び2は、勤務していた会社から交付されるもので、離職票がたくさんある場合にはすべて提出します。会社から離職票が交付されない時や、事業主が所在不明などの場合には、ハローワークに問い合わせましょう。
実際の給付までは、下記のフローに沿ってそれぞれのステップを完了する必要があります。
なお、注意事項として、一般の離職者に該当する場合には「給付制限」となる期間が2カ月ありますので要注意です。
受給までの流れ | 備考 | |
---|---|---|
① | 求職申込 受給資格確認・決定 |
必要書類をハローワークに持参し、受給資格の確認や決定が行われる |
② | 雇用保険説明会※2 | 受給資格者証などの交付を受け、手続きについての説明を受ける |
③ | 待期期間満了 | 受給資格決定から7日間の「待期期間」が必要となる |
④ | 給付制限 | 一般の離職者の場合は2カ月間の給付制限がある |
⑤ | 失業認定※3 | 原則として4週間に1回、受給資格者証と失業認定申告書を提出する |
⑥ | 失業保険の支払 | 指定口座への振り込み(失業の認定日から約1週間程度かかる) |
※2 雇用保険受給者初回説明会は、指定の日時に開催されますので、受給資格決定時に渡された「雇用保険受給資格者のしおり」を持参し、必ず出席しなければなりません。この時に、「雇用保険受給資格者証」、「失業認定申告書」が渡され、1回目の失業認定日が知らされます。
※3 原則として次の失業認定日の前日までに2回以上の求職活動が必要となります。職業紹介会社への登録するだけや、知人への仕事の紹介依頼、ハローワーク、インターネットなどでの求人情報の閲覧では求職活動にはなりません。
一般の離職者については、原則として失業保険の受給手続をした日から、4週間に1回、失業認定日にハローワークへ出向いて失業認定を得る必要があります。支給はその後となります。
自己都合退職の場合(一般の離職者及び一定の特定理由離職者の場合)の支給期間については、下記のとおりです。
被保険者であった期間 | ||||
---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 | 5年以上 | 10年以上 | 20年以上 |
5年未満 | 10年未満 | 20年未満 | ||
- | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合の場合は最長で 240日であるのと比べると、自己都合の場合の支給日数は短く設定されています。
なお、失業保険は離職の日の翌日から1年間が受給期間です。受給期間を過ぎると、上記の給付日数が残っていても支給されないため、早めの手続きが肝心です。
失業保険(基本手当)は、退職日以前6カ月の給与の平均から計算します。
賃金日額=
退職日以前6カ月の給与 ÷ 180(日)
この賃金日額とは、失業保険(基本手当)の日額の算定の基礎となる値です。賞与や臨時に支払われた給与は含まれないため、実際にもらっていた給与水準よりは低くなります。
そして、実際に支給される額は、賃金日額に50%~80%の給付率)を乗じた金額となります。
失業保険(基本手当)=
賃金日額 × 給付率(50%~80%)
給付率は、年齢や賃金日額によって決まります。また、賃金日額、基本手当日額には、年齢による上限が設けられていて、毎年8月1日に見直しが行われます。詳しくお知りになりたい方は、厚生労働省ホームページ「雇用保険に関する業務取扱要領(令和4年8月1日以降)」をご覧になるか、ハローワークにお問い合わせ下さい。
退職後、次の働き先が見つかるまでの間は失業保険があるとはいえ、手続きの仕方や実際の支給日が分からないと、心細い思いをします。たとえ貯金があったとしてもやはり不安になります。
退職時に、離職票などの書類について会社の人事担当によく聞いておき、手続きがスムーズにできるように工夫しておきましょう。そして、健康保険の手続きなども忘れずにしておきましょう。