社会の変化に伴い、育児に対する労働者の考え方も変わりつつあります。
育児休業に関しては、令和4年(2022年)4月1日に、あらたな法改正が行われます。さらに、10月1日、翌年の4月1日にも、法改正が控えています。
この記事では、男性労働者も利用できる育児休業の制度、および育児休業給付について解説します。
育児休業とはどのようなものか
育児休業は、いわゆる「育児・介護休業法」で定められた制度です。
原則として、育児休業を利用できるのは、1歳に満たない子を養育する男女労働者です。
ただし、下記に該当する労働者は、労使協定によって育児休業の対象外とできます。
- ●同一の事業主に継続して雇用されている期間が、1年に満たない労働者
- ●育児休業の申し出の日から、1年以内に雇用関係が終了する労働者
- ●1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
「労働者」には、パートタイマーやアルバイトなどの、短時間勤務の労働者も含まれます。
ただし、日々雇い入れられている労働者は、育児休業の対象外です。
有期雇用の労働者については、下記に該当する場合は、育児休業を取れます。
- ●同一の事業主に、継続して1年以上雇用されている
- ●子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新されるときは更新後の契約)の期間が満了することが明らかではない
また、ここで言う「子」とは、労働者と法律上の親子関係がある子どもを指します。つまり、実子か養子かは問わないということです。
育児休業を利用できる期間は、原則として、子が1歳に達する日までです。とはいえ、これはあくまでも原則です。
子が1歳に達する時点で、下記のすべてに該当するときは、子が1歳に達する日の翌日から1歳6か月に達する日まで、育児休業を取れます。
- ●子が1歳に達する日において、労働者本人または配偶者が育児休業をしている
- ●保育所に入所できないなど、子が1歳を超えても育児休業が必要と認められる
また、子が1歳6か月に達する時点で、下記のすべてに該当するときは、子が1歳6か月に達する日の翌日から子が2歳に達する日まで、育児休業を取れます。
- ●子が1歳6か月に達する日において、労働者本人または配偶者が育児休業をしている
- ●保育所に入所できないなど、子が1歳6か月を超えても育児休業が必要と認められる
さらに、両親が共に育児休業を取り、下記のすべてに該当するときは、育児休業の期間が、子が1歳2か月に達する日までに延長されます。 この措置は「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれています。
- ●育児休業を取得しようとする労働者(本人)の配偶者が、子が1歳に達する日以前に育児休業をしている。
- ●本人の育児休業開始の予定日が、子の1歳の誕生日以前である
- ●本人の育児休業開始の予定日が、配偶者がしている育児休業の初日以降である
育児休業を利用できる回数は、特別の事情がないかぎり、1人の子につき1回だけです。ただし、男性労働者に関しては、育児休業の再度取得が認められています。
子が生まれて8週間以内のあいだに、男性労働者がはじめての育児休業を取った場合は、特別な事情がなくても、再度育児休業が取得可能です。
この措置は「パパ休暇」と呼ばれています。
令和4年4月1日からの育児休業の改正とは
育児・介護休業法の改正により、令和4年(2022年)4月1日から、育児休業に改正が加えられます。
まず、事業主に対して、下記2点が義務づけられます。
- ●育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
- ◎育児休業・産後パパ育休に関する研修を行う
- ◎育児休業・産後パパ育休に関する相談体制を整える(相談窓口を設置するなど)
- ◎自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得の事例を集め、提供する
- ◎自社の労働者の育児休業・産後パパ育休制度と、育児休業の取得を促す方針を周知する
- ●妊娠・出産の申し出をした労働者に対する、個別の周知・意向確認の措置
- ◎育児休業・産後パパ育休にまつわる制度について
- ◎育児休業・産後パパ育休を申し出る先について
- ◎育児休業給付について
- ◎育児休業・産後パパ育休のあいだ、負担すべき社会保険料の取り扱いについて
労働者本人またはその配偶者の妊娠・出産などの申し出があった場合、事業主は個別に、休業制度に関する周知や、休業取得の意向の確認をしなくてはいけません。
周知するべき事項は、以下のとおりです。
言うまでもなく、休業の取得を阻むような周知と意向確認は、認められていません。
周知の方法に関しては、直接の面談にかぎらず、オンラインでの面談や書面の交付という形でも可能です。
ちなみに、「産後パパ育休」については、実施されるのは令和4年(2022年)10月1日からとなっていますので、ご注意ください。
もうひとつが、有期雇用労働者に対する、育児休業の取得要件の緩和です。
前述したとおり、有期雇用労働者が育児休業を取るには、下記に該当している必要があります。
- ●同一の事業主に、継続して1年以上雇用されている
- ●子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新されるときは更新後の契約)の期間が満了することが明らかではない
ひとつ目の「同一の事業主に、継続して1年以上雇用されている」という要件が、令和4年(2022年)4月1日からは撤廃されます。
ですが、労使協定が締結されている場合は、事情が異なります。
継続雇用の期間が1年に満たない有期雇用労働者については、引き続き、育児休業の対象外とすることが可能なのです。
お勤めの企業で、そのような労使協定が締結されていないか、確認することをおすすめします。
育児休業給付とは、労働者が育児休業取得中に受給できる給付金です。
育児休業給付を受給するには、下記の要件をすべて満たしていなくてはいけません。
- ●雇用保険の被保険者であること
- ●育児休業を開始した日前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること(賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月のみ、1か月とする)
- ●育児休業中の各1か月ごとに、育児休業開始前の1か月当たりの賃金の80パーセント以上の賃金が支払われていないこと
ちなみに、育児休業給付は、育児休業が終了した後、職場復帰することを前提として支給される給付金です。
育児休業給付とは、労働者が育児休業取得中に受給できる給付金です。
したがって、育児休業を開始する時点で、すでに退職の予定があるときは、支給対象外となります。
育児休業給付の受給資格を確認した後、退職したときは、その退職日を含む支給単位期間のひとつ前の支給単位期間までが、支給対象となります(支給単位期間の末日で退職した場合は、当該期間も含む)。
原則として、育児休業給付で受給できる金額は、以下のように算出されます。
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業の開始から6か月経過後は50パーセント)
「休業開始時賃金日額」とは、簡単に言えば、育児休業を開始する前の6か月の賃金を180で除した金額です。
「支給日数」とは、育児休業終了日の属する支給対象期間を除いては、30日となっています。育児休業終了日の属する支給対象期間だけは、その支給対象期間の日数となります。
なお、休業開始時賃金日額×30日で算出された金額に対しては、上限額と下限額が定められています。上限額は450,600円、下限額は77,310円です。
つまり、1支給対象期間について支給される育児休業給付は、301,902円が最高額ということです。
上限額と下限額は、毎年8月1日に変更されます。今後、育児休業給付を受給する予定のある方は、ご注意ください。
また、前項で、育児休業給付の受給要件として「育児休業開始前の1か月当たりの賃金の80パーセント以上の賃金が支払われていないこと」をあげました。
もし、80パーセント未満の賃金が支払われている場合は、その賃金額に応じて、育児休業給付の支給額が減ることがあります。
男性労働者の育児休業取得については、法の定めを変えたからといって、ただちに意識の変化に結びつくわけではないかもしれません。
ですが、法に定められた権利は、行使することが許されているものです。
最初にお伝えしたとおり、育児・介護休業法は、今後も改正が行われる予定です。育児休業を取りたいと考えている男性労働者は、ぜひ情報を逃さないようにしてください。