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コロナ禍で急増する解雇も相談可能!個別労働紛争解決制度とは

公開日:2021年12月10日
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人が人を雇い、共に働くかぎり、トラブルが起こるリスクは常にあります。労働者個人と事業主のあいだで生じる労使トラブルを、ここでは「個別労働紛争」と呼びます。
この記事では、この個別労働紛争の解決をサポートするための「個別労働紛争解決制度」について、解説します。

個別労働紛争解決制度とは

個別労働紛争解決制度とはどのような制度か

個別労働紛争解決制度とは、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づいた制度です。
コロナ禍で急増している解雇も含め、さまざまな個別労働紛争の円満かつ迅速な解決をサポートすることを目的としています。なお、個別労働紛争解決制度は、労働者だけでなく事業主も利用可能です。

個別労働紛争解決制度には、以下の3つが設けられています。

  1. ●総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
  2. ●都道府県労働局長による助言・指導
  3. ●紛争調整委員会によるあっせん

いずれも無料で利用できます。この点は、労働者にとって大きなメリットと言えるでしょう。また、個別労働紛争解決制度を利用したことを理由に、事業主が労働者に不利益な取扱いをすることは、法律で禁じられています。

厚生労働省が公表した「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、個別労働紛争解決制度の利用件数は前年度より増加しています。コロナ禍の影響から解雇を通告された、所定労働日数を一方的に減らされた、などの事例も報告されています。

個別労働紛争解決制度が扱う「紛争」とはどのようなものか

個別労働紛争解決制度が、個別労働紛争のすべてを扱えるわけではありません。対象となる紛争と、対象とならない紛争があります。

個別労働紛争解決制度の対象となる紛争は、次のようなものです。

  1. ●労働条件についての紛争(解雇・雇い止め・労働条件の不利益変更など)
  2. ●職場環境についての紛争(いじめ・嫌がらせ・パワーハラスメントなど)
  3. ●損害賠償についての紛争(退職に伴う研修費の返金・会社の所有物の破損など)
  4. ●労働契約についての紛争(会社の分割に伴う労働契約の承継・同業他社への転職禁止など)
  5. ●募集・採用についての紛争(ただし、「紛争調整委員会によるあっせん」では対象外です)

個別労働紛争解決制度の対象となる紛争は、次のようなものです。

  1. ●労働組合と事業主のあいだの紛争
  2. ●職場環境についての紛争(いじめ・嫌がらせ・パワーハラスメントなど)
  3. ●ほかの制度で扱われている紛争(裁判で争っている、あるいは判決が確定しているなど)
総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談とは
総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談とはどのような制度か

「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」とは、労働紛争に関して、法令や裁判の判例などの情報を提供したり、個別相談に応じたりする制度です。また、助言や指導制度、あっせん制度についての説明もしています。
労働者(現在働いている人)だけでなく、求職者(学生や就活生も含む)の相談も受け付けていますし、外国語での相談にも対応しています。面談にかぎらず、電話でも相談することができますので、コロナ禍で外出を控えている人も安心して利用できます。

総合労働相談コーナーは、各都道府県の労働局や労働基準監督署にあります。また、都府県によっては、駅周辺のビルにも設けられています。総合労働相談コーナーの所在地や電話番号は、厚生労働省のホームページに掲載されています。

総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談を利用するメリット

「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」では、相談者の希望や必要に応じて、ほかの紛争解決機関との連携も可能です。

たとえば、以下の機関との連携が行われています。

  1. ●都道府県(労政主管事務所・労働委員会など)
  2. ●都道府県(労政主管事務所・労働委員会など)
  3. ●日本司法支援センター(いわゆる「法テラス」)
  4. ●労使団体の相談窓口

相談者のプライバシー保護にも配慮されています。相談の内容から女性相談員を希望する人には、女性相談員がいる総合労働相談コーナーを紹介しています。

都道府県労働局長による助言・指導とは
都道府県労働局長による助言・指導とはどのような制度か

「都道府県労働局長による助言・指導」とは、都道府県労働局長が紛争の当事者に、問題となる点を指摘し、解決の方向を示したりすることで、自主的な解決を促す制度です。
「都道府県労働局長による助言・指導」は、あくまでも話し合いによって解決を促す制度です。紛争の当事者に解決を強要したり、解決のための措置を強制したりできるものではありませんので、ご注意ください。

「都道府県労働局長による助言・指導」も、総合労働相談コーナーで行われています。

都道府県労働局長による助言・指導を利用するメリット

「都道府県労働局長による助言・指導」では、その紛争に関して法律違反の事実が認められた時は、労働基準監督署など、指導の権限を持つ機関に取り次ぎ、行政指導などを行います。
もちろん、「都道府県労働局長による助言・指導」でも、プライバシー保護に対する配慮はされています。

「都道府県労働局長による助言・指導」で紛争が解決しなかった場合は、当事者の希望に応じて、「紛争調整委員会によるあっせん」に移ることができます。とはいえ、「紛争調整委員会によるあっせん」の前に、必ず「都道府県労働局長による助言・指導」が必要というわけではありません。
また、「紛争調整委員会によるあっせん」に移らない時は、ほかの紛争解決機関の紹介もしています。

紛争調整委員会によるあっせんとは
紛争調整委員会によるあっせんとはどのような制度か

「紛争調整委員会によるあっせん」とは、「紛争調整委員」が公正かつ中立な第三者として、紛争の当事者のあいだに入り、話し合いを促すことで、自主的な解決を図る制度です。「紛争調整委員会」とは、弁護士、社会保険労務士、大学教授などの労働問題の専門家で組織されている委員会です。

紛争調整委員は、労使双方が希望した場合には、あっせん案を提示します。ただし、紛争の当事者はあっせん案を拒否することが可能です。合意に至らなかった時は、「紛争調整委員会によるあっせん」は打ち切られ、ほかの紛争解決機関を紹介します。
「紛争調整委員会によるあっせん」は、総合労働相談コーナーで申し込みを行います。

紛争調整委員会によるあっせんを利用するメリット

「紛争調整委員会によるあっせん」で合意に至った場合、そのあっせん案は、民法における和解契約と同じ効力を持ちます。それでいて、「紛争調整委員会によるあっせん」は裁判に比べて、手続きがスピーディーで簡単です。原則1回で処理されます。

「紛争調整委員会によるあっせん」でも、紛争の当事者のプライバシー保護に配慮しており、手続きは非公開となっています。しかも、「紛争調整委員会によるあっせん」では、紛争調整委員が労使双方に個別で意見調整を行いますので、紛争の当事者同士が顔を合わせることはありません。

ただ、「紛争調整委員会によるあっせん」には、個別労働紛争解決制度のほかの2つにはないデメリットもあります。
デメリットは、紛争の相手方が「紛争調整委員会によるあっせん」を拒否することができる点です。そのため、相手方が不参加を表明した時は、「紛争調整委員会によるあっせん」は行われず、打ち切りになります。

まとめ

個別労働紛争解決制度は、紛争の自主的な解決を図るための制度ですので、すべての紛争を解決できるわけではありません。しかし、無料で個別労働紛争解決制度を利用して解決に至り、労働者が解決金や慰謝料を受け取った事例も多くあります。

前述した「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」でも、コロナ禍による解雇や退職勧奨についての「紛争調整委員会によるあっせん」で、労働者に補償金が支払われた事例が紹介されています。

コロナ禍による整理解雇の通告など、労使トラブルを抱えている人は、一度、総合労働相談コーナーに相談してみることをおすすめします。

サガアサコ
長年のキャリアのなかで、総務・労務関係の実務経験は15年以上に。
社会保険労務士の資格取得済み。現在は、知識と経験を活かして、フリーランスのWebライターとして活動中。
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